2010年11月13日

大腸がん治療の最前線

 今日は東京・よみうりホールで行われた市民公開講座、「大腸がん治療の最前線」の基調講演1の要約を紹介します。それにしても、女子バレーは惜しかったですね。

 
がんは、1981年から日本人の死因の第1位であり、今では3人に1人ががんで亡くなっています。現在では大腸がんは増加の一途にあり、その死亡者数は、1970年から4倍以上にもなっています。
 がんになった場合、医師などの専門家に相談することはもちろんのこと、科学的に検証された正しい情報を集めることも治療を考える上で重要です。「情報の発信主」「情報源」「いつの情報か」などを確認し、有益で信頼性のある情報か判断しましょう。
 進行大腸がんで手術ができない方の場合、約10年前には抗がん剤を使用しなければ平均余命は8カ月ほどでした。現在では、分子標的薬剤を含む抗がん剤治療の進歩により約2年にまで延びてきています。
 最近の抗がん剤治療の進歩で、特に注目されているのが分子標的薬剤です。がん細胞に特有の変化や遺伝子を標的とし、その標的に選択的に作用します。従来の抗がん剤と比較し、正常細胞への影響が少ないため、副作用が少なくなることや、より高い効果を期待できます。
 国内で大腸がんの適応を有する分子標的薬には、血管新生阻害薬(抗VEGF抗体、ベバシズマブ)や抗EGF-R抗体薬(セツキシマブ、パニツムマブ)があります。
  がん治療では、がん細胞の異常な増殖を止めなければなりません。抗EGF-R抗体薬は、細胞増殖のスイッチであるEGF-R(上皮細胞増殖因子受容体)を標的に作用するため、がん細胞の増殖を止めることができる分子標的薬です。
  抗がん剤治療の前に遺伝子検査を行うことで、一人ひとりに適した治療を選ぶことができます。これは「個別化治療」と呼ばれ、大腸がんでも実施されるようになりました。細胞内に存在するKRAS(ケーラス)と呼ばれるタンパク質も、がん増殖に関わることがわかっています。したがってKRAS遺伝子を調べることで、セツキシマブなどの抗EGF-R抗体薬の効果を予測できます。
  KRAS遺伝子の変異がない場合(野生型)は、抗EGF-R抗体薬の効果が期待できます。最新の「大腸癌治療ガイドライン」でも、KRAS遺伝子に変異がない患者さんへの抗EGF-R抗体薬の使用が推奨されています。
  変異がある人は約40%と言われています。変異型の場合、他の治療法を選択して無用な副作用を避けることが、医療費を抑えることにもつながります。
  したがって、個別化治療の実現に向けて、抗がん剤治療を始める前にはKRAS遺伝子の検査を受けることをお勧めします。
  2008年に国内で発売されたセツキシマブは、「治癒切除不能な進行・再発の大腸がん」と診断された患者さんが投与の対象です。また、外科手術による切除が不能と診断された場合でも、セツキシマブと標準的な抗がん剤の併用で腫瘍を縮小させて切除が可能になると、治癒(5年生存)の可能性が高まることが報告されています。セツキシマブを用いた臨床試験では、従来の標準治療と比較してがんが悪化するリスクを31%抑制し、生存期間も約2年にまで延長することが確認されています。
  患者さんのQOLは、抗がん剤治療の影響で低下するという誤解がありますが、本当はがんの進行により低下することがわかっています。現在の抗がん剤治療は、副作用の対処法も含めて大きく進歩してきました。副作用をコントロールしながら、がんを抑える効果に優れた治療を行うことが求められています。
posted by toyoharu at 22:16 | 埼玉 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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