2014年12月03日

再増税延期、そのとき舞台が動いた

 今日は、日経から以下のコラムを紹介します。
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 消費再増税の延期はどのようなタイミングで決まったのだろうか。安倍首相の決断に決定的な役割を果たしたのは、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏である。

 内閣官房参与である本田悦朗氏(静岡県立大教授)は、ブルームバーグのインタビューに答え、そう語っている。11月6日、首相とクルーグマン・プリンストン大教授の会談をセットし、自らも同席したうえで、教授に再増税延期を進言してもらったという。再増税延期のためには海外の著名経済学者の助けが必要。本田氏はそう考え、帝国ホテルから官邸に向かう車のなかで、首相との会談がいかに重要なのかを、クルーグマン氏に説明した。

 首相が延期を発表した直後の11月20日のインタビューである。本田氏の語り口には自然と熱がこもっているが、話に偽りはないはずだ。傍証がある。「歴史的な会談だった。成功だった」。11月6日の会談直後に本田氏は、関係者に高揚感をもって、こう伝えているからだ。

 テレビ番組のタイトルを拝借すれば、そのとき歴史は動いた。本田氏が高揚感を覚えたのも無理はない。「財務省に外堀を埋められて再増税の布石が敷かれつつある」。10月20日過ぎの時点では、同氏は別の関係者にそんな感想をもらしていた。「孤立感が伝わってきた」と、その頃本田氏と会食した人はいう。

 そして10月31日の黒田日銀総裁の追加金融緩和。多くの市場関係者は「再増税を促すサプライズ緩和」と受け止めたが、首相の周辺の受け止め方は違った。この日、首相はポジティブ・サプライズ(うれしい驚き)に顔をほころばせつつも、再増税について「最後は1人で決めます」と言っていたからだ。

 再増税をめぐる有識者検討会議が始まろうとしている時に、「独裁的に決める」といった発言である。周辺には「延期に傾いてきたかな」と、首相の胸の内を感じ取った向きもあった。単なる心境変化ではない。何よりも、7〜9月期の実質国内総生産(GDP)について、下振れしそうな雰囲気が伝わってきた。民間エコノミストの予想の平均は前期比年率2%台の半ばだったが、「とてもそこまではいかない」というのが官邸の判断だった。

 4月の増税の後遺症が癒えないうちに、再増税を決めれば、消費を一段と冷え込ませかねない。そうなれば、デフレ脱却も頓挫し、アベノミクスもおしまいだ。そんな危機感を抱いていた首相は、アベノミクスの支持者であるクルーグマン教授との会談で千万の援軍を得た思いだったはずだ。

 あに図らんや、11月17日発表の7〜9月期の実質GDPの速報値はマイナス成長となった。GDPが出てみると、再増税延期の判断に表だって異を唱えるエコノミストはめっきり減った。そして衆院解散と総選挙である。11月30日のテレビ番組で語ったように、首相は財務省による多数派工作で、再増税に向けた党内世論が形成されることを懸念していた。総選挙は再増税延期への民意を取り付けて、財務省に対する主導権を確立するのが大きな狙いだろう。

 その代償は少なくない。財務次官経験者は11月に入っても「再増税は確実だ。賭けてもいい」と語っていた。黒田日銀総裁は安倍・クルーグマン会談の仕掛けを知るよしもなく、同じ頃訪問客に追加金融緩和の意義を熱っぽく語っていた。財務省と黒田日銀は首相によって、はしごを外されたともいえる。その心中、いかばかりなりや。

 首相の賭けが国民の支持を得られれば、増税を延期した17年4月まで、首相は成長路線に全力を傾ける。反対に否定されれば、アベノミクスには幕が引かれる。選挙結果は神のみぞ知る。賽は投げられた。
posted by toyoharu at 22:04 | 埼玉 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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